Dorico Tips #2: 符頭なし音符を表記する

追記:Dorico v4.3以降は、浄書(Engrave)モードで符頭を選択した際のプロパティに「符頭を非表示」(Hide notehead)が追加されたため、このページに記載されている作業は不要になった。しかし、符頭をカスタムする際の参考にはなるかと思うので、記事自体は残しておく。


Doricoには標準で様々な符頭のバリエーションが用意されており、音符単位で変更が可能だが、なぜか符頭なしという選択肢がない。符頭なし音符は、

  • リズムだけ表記して正確なピッチは演奏者に委ねるとき
  • リードシート等でトップノートだけを表記するとき
  • (上譜例のように)ポルタメント中でのリズムを示すとき

等々、様々な用途があるのに残念なことである。

解決法

符頭なし音符の符頭セットを作成して、それを当該の音符に適用する。

  1. ツールバーから、ライブラリ(Library)>符頭セット(Notehead Sets…)を選択する。
  2. 画面左下の+ボタンをクリックし、新しい符頭セットを作成する。
  3. 符頭セットに名前をつける。ここでは「Headless Noteheads」とする。
  4. ウィンドウ右側下の+ボタンをクリックし、作った符頭セットに新しい符頭を追加する。見た目はデフォルトのものと同様だが、内部的には別物として扱われる。

注意

ここで、デフォルトで追加されている黒符頭は編集してはならない。この符頭は他の符頭セットからも参照されている一般的な符頭であって、これを編集してしまうと他の符頭セットで使われている同形の符頭も一括で変更されてしまう。もちろんそのような編集をしたいこともあるだろうが、今やりたいことではない。

  1. デフォルトで追加されていた符頭を選択し、符頭セットから削除するボタン(箱から外向きの矢印が伸びるアイコン)をクリックして符頭セットから削除する。こうして手動で追加した符頭のみが残る。
  1. 自分で追加した符頭が選択されている状態のまま、編集ボタン(鉛筆アイコン)をクリックする。
  1. エディター内の符頭を選択して、削除ボタン(ゴミ箱アイコン)をクリックする。
  2. ウィンドウ右側で テキスト(Text) を選択する。
  3. スタイルとして デフォルトの記譜フォント(Default Music Font)を選択する。
  1. テキストボックスにスペース等の空白文字を数文字入力して、テキストを追加(Add Text)をクリックする。空白文字の文字数は、幅がもとの符頭と同じぐらいになるよう適切に調節する(この例では半角スペースを4文字入れている。これが合わないと音符のスペーシングに影響する)。
  2. OK をクリックして符頭の編集ウィンドウを閉じる。
  1. 符頭の名前を決める。ここでは仮に「noteheadHeadless」とする。
  2. 全ての音価に対してこの符頭を適用するので、「これ以下のデュレーションに使用」(Use for durations shorter than and equal)と「これ以上のデュレーションに使用」(Use for durations longer than and equal)の両方にチェックが入った状態にする。
  3. OK をクリックして符頭セットの編集ウィンドウを閉じる。
  1. 符頭なし音符にしたい音符を選択し、編集(Edit)>符頭(Notehead)以下から新たに作った符頭セットを選択すれば完了。この操作はコンテキストメニューからでも可能で、画像ではそのようにしている。

なお、当該の音符が五線外にある場合は加線が残ってしまうので、画面下のプロパティから「加線を非表示」(Hide ledger lines)をオンにしておくとよいだろう。また、同様の設定を他のプロジェクトファイルで用いるのなら、ライブラリをエクスポートしたあと、ライブラリマネジャー経由でインポートする等の方法が考えられる(日本語版マニュアルにはまだ記事が存在しないので英語版にリンクしている)。

ところで、下譜例のようなケースでは、タイで連結してしまうと連結された後の音符も通常の符頭に変わってしまうので、応急処置的にスラーでつないでいるが、スラーとタイはデザインが独立しており、このような処理は避けたい。このような場合はどう対応するのがベストなのだろう?

追記(2022/8/9):Twitter上で、浄書(Engrave)モードであれば、タイに繋がれた音符を個別に選択できる旨の指摘を頂いた。グリッサンドの始点の位置を手動で調節する必要はあるが、これでタイの表記との両立が可能になる。

その他の方法

簡易的な方法として、符頭を消したい音符について、プロパティパネルの色(Color)をオンにし、色選択画面で透明にしてしまう方法もある。使い回しを考えると先に紹介したほうが「正攻法」だと思うが、数か所ぐらいならこれで処理してしまってもいいのかもしれない(空白文字で幅を合わせるような方法が「正攻法」というのもおかしな話ではある)。

参考資料

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