Dorico Tips #3: 小節線のずれないポリメトリック(異なる拍子の同時進行)を表記する

Doricoで一部の五線だけに拍子記号の変更を適用するには、Shift + Mで拍子記号のポップオーバーを表示し、希望の拍子を入力してOption + Enter(WindowsはAlt + Enter)を入力すればよい。同様の機能はFinaleにもあるが、Doricoの強みは小節線がずれる場合も標準でサポートされることだ。リゲティの《練習曲》にあるような小節線のずれをFinaleで表記しようとすると猛烈に面倒だが、Doricoであれば比較的簡単に実現できてしまう。

一方、4分の2拍子と8分の6拍子のように、本来音価の合計が異なる拍子を「小節線をずらさずに」同時進行させるようなパターン(先の例では4分の2拍子のパートが2連符のように聴こえる)は、Doricoでは一工夫が必要になる。上記の手順で行うと、小節線がずれてしまうからだ。

解決法

Doricoの拍子記号ポップオーバーでは、弱起の設定ができる。書式は「(表記上の拍子),(表記上の拍子の分母を1単位とした際の当該小節の音価)」で、例えば4分の4拍子で8分音符3つ分の弱起を表記するなら「4/4,1.5」と入力することになる。

普通これはフローの冒頭小節でしか使わないが、設定自体はどこでも可能なので、「表記上の拍子と実際に含まれる音価の数を不一致にするツール」として利用できることに着目する。当然弱起なので次の小節では表記上の拍子に戻ってしまうが、その後は他の五線に合わせた拍子に戻してしまい、連符で辻褄を合わせればよい。

実際に表記してみよう。ここでは下記譜例の状態から、下の五線が2小節目以降4分の2拍子として表記されるよう設定してみる。

  1. 下五線の2小節目の最初の8分音符を選択する。Shift + Mで拍子記号のポップオーバーを表示し、「2/4,3」と入力してOption + Enterを押す。
  2. 下五線の3小節目の最初の8分音符を選択する。同様に拍子記号のポップオーバーに「6/8」と入力してOption + Enterを押す。
  1. 下五線の2小節目以降に、2連符で8分音符を入力する(ここまで見た目にわかりやすいよう元から8分音符で埋めておいたが、実際は空の状態から始めてよい)。;(セミコロン)キーで連符のポップオーバーを表示し、「2:3」と入力してEnterを押し、8分音符を入力する。
  1. あとは不要な拍子記号を非表示にし、連符の数字を隠せばできあがり。

ということで、一応表記できるにはできるのだが無駄に頭を使う。このような表記は、音価の扱いとしては特殊であるものの決して珍しいことではないので、もう少し簡便に設定できないものかと思う限りである。

その他の方法

音価については連符で辻褄を合わせ、拍子記号はShift + Xによるテキストとして貼り込んでしまうという方法も考えられている。テキストとしての拍子記号を入力する方法については、リンク先から参照されているスレッドを参照のこと。この方法では複雑な拍子記号の設定を行わなくて済む等の利点があるものの、拍子記号の表記に必要な水平方向のスペースは何らかの方法で(手動で)確保する必要が生じる。

参考資料

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